「迷ったとき、仕事はどう選べばいいですか」とよく聞かれます。
私の答えは、いつも一つです。逆算してください、と。最後にどこへ行きたいかを自分で決めて、そこから今やるべきことを引き算する。キャリアをパズルのように考え、足りないピースを埋めにいく。この発想があるかどうかで、10年後がまるで変わります。
今日は、私自身が社長を「逆算」でつかんだ経験を交えて、後悔しないキャリアの作り方をお話しします。
まず「ゴール」を決める。話はそこからしか始まらない
私が「社長になりたい」と思ったのは、28〜29歳の頃でした。そこから逆算して、結果的に実現するまで10年ほどかかりました。
大事なのは順番です。ゴールが決まっていなければ、そこへ最短で近づく道筋は描けません。多くの人は、目の前の選択肢を見比べて「どっちが得か」で選んでしまう。でも、行き先が決まっていない船は、どの風が追い風かもわからない。まず、自分は何を成したいのか。これを決めるのが先です。
ゴールの一つに「起業」を据えるなら、ゼロイチに頼らない起業アイデアの作り方も参考になります。
キャリアは「T字」で考える
では、どんなピースを集めればいいのか。私が意識しているのは「T字」です。
横棒は、広く浅い経験。縦棒は、一つの深い専門性。広く浅く全体を見渡せる土台の上に、「これだけは誰にも負けない」という深い柱が一本ある ── この形が強い。これはハーバードでも言われる考え方です。
転職とは、このT字に足りない部分を埋めにいく行為であるべきです。「縦棒(専門)が欲しいから、この経験を取りにいく」「横棒(視野)が足りないから、別の領域を経験する」。そういう戦略的な動きなら、必ず後で効いてきます。
やってはいけない転職 ― 「同じ給料で、同じ仕事」
逆に、はっきり言える「意味のない転職」があります。それは、給料が同じで、さらに同じ職種をやる転職です。
営業をやっていて、別の会社でまた営業をやる。給料も変わらない。これは、ほとんど何も生みません。会社の看板が変わるだけで、T字は1ミリも伸びていない。長い人生で見れば、数万円の昇給のためだけに動くのも、あまり意味がない。
価値のある転職は、たとえばこうです。営業をやってきた人が、マーケティングをやりたくてMBAを取り、マーケティングに移る。その後、事業企画へと広げていく。一時的に給料が下がることがあっても、将来やりたいことに近づくためのスキルを得る転職なら、後でぐっと伸びます。そういう人ほど、キャリアは伸びていく。
「自分のフィロソフィーと合うか」を侮らない
もう一つ、見落とされがちな観点があります。自分の生き方・信念と、会社の方向性が合っているかです。
何人も見てきてわかったのですが、自分のフィロソフィーと会社の方向性が合っていない場合、その溝は必ずと言っていいほど広がっていきます。「とりあえずもう少しやってみよう」と続けるほど、どんどん離れていく。歩み寄って一致することは、まずありません。
自分の生き方は、それくらい大事です。合っていないと感じるなら、タイミングを見て、自分のフィロソフィーに合う場所へ移ったほうがいい。世の中には、必ず合う会社があります。
逆算で動く人は、振る舞いも違う
ゴールから逆算して動いている人は、日々の振る舞いにもそれが出ます。
たとえば会話。私は商談の前に「今日はボールポゼッション3:7でいこう」と決めることがあります。サッカーと同じで、こちらが話しすぎる(7割持つ)と、相手の本音が出てこない。だから相手に7割話してもらい、こちらは好機を待つ。話を聞くのがうまい人 ── 会話の保有率を5割以下に抑えられる人は、たいていビジネスのセンスがあります。
先回りできる人も同じです。「こういうときはどうする?」と聞いて即答が返ってくる人は、あらゆる場合を想定して動いている。逆算でゴールから考えているからこそ、目の前の一手にも準備が効くのです。
逆算で動いた結果、私がどう社長の椅子をつかんだかは青いネクタイの話に書きました。
キャリアは、運や勢いだけで決まるものではありません。ゴールを決め、T字で考え、足りないピースを逆算で埋めにいく。同じ給料で同じ仕事を繰り返す転職を避け、将来に効くスキルを取りにいく。それだけで、10年後の景色は変わります。
私が外資のキャリアやMBAで培った、こうしたキャリア設計の考え方は、「MBAに行かない人のための無料メール講座」で少しずつお届けしています。自分の行き先を描く入口として、受け取ってみてください。