経済・統計

GDPが読めると、世界が見えてくる ── マクロ経済とGDPの中身

結論から言います。GDPは「何%増えた」と総額を見るだけでは意味がありません。中身を分解して見ると、その国が抱える課題と政策が、手に取るように見えてきます。 国を一つの会社だと思えば、GDPはその会社の業績表。今回は、ミクロ(個々の価格)から視点を引いて、国全体の経済を見る「マクロ経済」を、GDPの読み方を中心に学びます。

マクロ経済とは:国を「会社」として見る

ミクロ経済が「りんごはなぜ100円か」という個々の価格の話だったのに対し、マクロ経済は国全体の経済を見ます。コツは、国を一つの会社として見ること。日本という会社の社長は首相。その会社の業績が、GDPです。企業を財務分析(レシオ)で見たように、国はGDPで見るわけです。

国ではなく個々の市場の価格メカニズムは、対になるミクロ経済の記事で。

GDPの正体 ── 「刺激ム」で覚える

GDP(国内総生産)の計算式は、こうです。

GDP = C + I + G + EX − IM

記号だけ見ると難しそうですが、何も考えず、こう読んでください——「シゲキーム」。お菓子の「シゲキックス」みたいで覚えやすい。中身はこうです。

– C(Consumption) ── 消費- I(Investment) ── 投資- G(Government) ── 政府支出- EX(Export) ── 輸出- IM(Import) ── 輸入(これだけマイナス)

つまり、消費+投資+政府支出+(輸出−輸入)=GDP。「GDPって何?」と聞かれたら「シゲキム(C+I+G+EX−IM)です」と答えられれば十分です。そして、この中身の内訳と推移を見ることが、マクロ経済の核心です。

各国のGDPは、中身がまるで違う

ここが面白いところです。GDPの構成比は、国によってまったく違います。日本は消費55%・投資20%・政府25%・輸出17%・輸入−17%といった構成ですが、他国を見ると個性がくっきり出ます。

アメリカ ── 消費が毎年伸び続け、GDPに占める割合が非常に大きい。投資も政府支出も安定。一方で輸入が輸出を上回る(輸入超過)。だから、アメリカは「消費の国」。コロナで消費が落ちれば真っ先に効くので、消費をいち早く戻し、輸出を増やしたい——米中問題などのニュースも、この構造から読めます。

中国 ── 消費と投資が高成長で牽引してきたが、近年は鈍化。意外なことに輸出と輸入はほぼイーブン(生産は多いがエネルギーを輸入しているため)。「中国=輸出の国」というイメージは、実は思い込み。もっと輸出を増やし、投資を呼び込みたいが、成長が鈍ってきた焦りが見える。

ドイツ ── 消費・投資・政府が安定している一方、輸出入だけが行ったり来たり。つまりGDPが輸出に左右される。「皆がベンツを買うかどうか」にかかっている輸出依存の国。安定して輸出を増やしたい。

イタリア ── 消費も投資も政府支出も弱く、成長がほとんどない。要素がバラバラで、打つ手が少なく、もがいている様子が見える。

このように、GDPの内訳を見るだけで、その国の現状と、政府が何をしたいかが見えてくる。これが「GDPを読む」ということです。

日本の現状:失われた20年

日本のGDPは、全体に伸びが小さいのが特徴です。成長率は約2%で、各国(イギリス8%、イタリア7%、アメリカ7%など)の中で最下位。20年前、日本は世界2位の経済大国でしたが、今や3位に落ち、中国に大きく抜かれました。

これが「失われた20年」(最初は「失われた10年」と呼ばれていました)。背景には、プラザ合意以降の円高→地価上昇→バブル→その崩壊→長期低成長、という歴史的な流れがあります。ちなみに、1人当たりGDPでは、日本はかつて世界1位だった時期もあります。それだけに、取り残された感が際立つのです。

アベノミクスは何をしたか

この低成長から抜け出そうとしたのが、アベノミクスです。「何が何でも2%成長を実現する」という強いメッセージ(バズーカ)を何度も打ち、日銀総裁を変えて3年で140兆円を投じ、マネタリーベースを上げて(お金をたくさん供給して)経済を活性化しようとしました。

GDPで見ると、震災後の2013年から右肩上がりで回復。消費・投資・政府支出・輸出、すべてが増えました。ただ、2017〜18年でフラットになり、2019年からの米中問題で輸出が減速。GDPの中身を追うと、こうした浮き沈みがはっきり見えます。

日本の4つの課題

GDPの各要素から、日本の課題が浮かび上がります。

– 消費(C) ── 人口問題。高齢化(世界一の長寿国)と少子化で、消費が回りにくい- 投資(I) ── 規制緩和で、外国からの投資を呼び込めるか- 政府(G) ── 財政赤字をどうするか。政府がお金を使って経済を回すのが難しい- 輸出入(EX−IM) ── 地政学的な問題(米中・近隣国との関係)

GDPを増やすには、これらに手を打つ必要がある。生産効率を上げる(AI・DX)、貯蓄を投資に回す(金融教育)、国を開いて投資を集める、女性の社会活躍を進める——といった方向が考えられます。

日本の課題を解く現代のテーマは、DXの記事で扱っています。

まとめ

マクロ経済とGDPの読み方を整理します。

– マクロ経済は国を会社として見る。その業績表がGDP- GDP = C+I+G+EX−IM(消費・投資・政府・輸出−輸入)。「シゲキム」で覚える- 総額でなく中身の内訳を見る。各国で構成がまるで違う(米=消費中心・輸入超過/中=成長鈍化・輸出入イーブン/独=輸出依存/伊=全要素が弱い)- 日本は成長率が低く「失われた20年」。かつては1人当たりGDP世界1位だった- アベノミクスは2%成長を掲げ大規模緩和を実施。GDPの中身を追うと浮き沈みが見える- 日本の課題は、消費(人口)・投資(規制緩和)・政府(財政赤字)・輸出入(地政学)の4つ

GDPの中身を分解して読めるようになると、ニュースの見え方が変わります。「アメリカの消費が落ちた」「中国の成長が鈍った」——その一つひとつが、シゲキムのどの要素の話なのかが分かる。GDPが読めると、国際経済が見えてくるのです。

これで、ミクロ(価格の決まり方)とマクロ(国全体の経済)の両方がそろいました。価格という足元から、世界経済という大局まで——経済を見る2つの目を、ぜひ日々のニュースに当ててみてください。


この記事は、僕が主宰するオンライン講座「スタバード」のマクロ経済論の講義の内容をもとに書いています。MBAやハーバードで学んだ経営の核を、日本語でやさしく届けるために、「MBAに行かない人のための無料メール講座」をやっています。興味があれば、のぞいてみてください。

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