結論から言います。あなたがイライラしているのは、出来事のせいではありません。あなたの「脳」が、その出来事に勝手に意味をつけているからです。 遅い車にイライラするのは、車のせいではない。同じ車を見ても、平気な人もいれば、「あのおばあちゃん、大丈夫かな」と心配する人もいる。違いは、それぞれがかけている「意味を作るレンズ」にあります。今回は、リーダーが最初に剥くべき玉ねぎの皮——「コンタクトレンズ」を学びます。
(前回の全体像で触れたとおり、リーダーシップは本来の自分になることから始まり、そのために玉ねぎの皮を3枚剥きます。これはその1枚目です。)
まず:リーダーシップは「実践」でしか身につかない
本題の前に、大前提を一つ。リーダーシップは、知識として学んでも身につきません。優れたリーダーを外から観察しても、テニスを見るだけでは打てるようにならないのと同じ。コートに降りて、自分でボールを打つしかない。
なぜなら、リーダーシップとは、日々起きることに対して自発的・直感的・効果的に応答すること。「ちょっと待って、どうリードするか調べるから」では発揮できません。その場で適切に動くには、本来の自分でいる必要がある。そのために、皮を剥くのです。
あなたは「玉ねぎ」 ── 見えない皮をかぶっている
人は誰でも、生まれてから今まで、皮をかぶって生きています。でもその皮は、自分にも他人にも見えない。だから「あなたは皮をかぶっている」と言われてもピンと来ない。でも確かにある。そして、皮を剥くのは自分にしかできません(他人が剥いてあげることはできない)。
リーダーシップのスタイルが人それぞれ違うのも、このためです。リーダーシップは、ありのままの自分の姿で存在すること。これまでの経験や生い立ちから形成されるので、人と違っていい。だから、誰かの真似ではなく、自分独自のリーダーシップを作っていくのです。
1枚目の皮:意味を作る「コンタクトレンズ」
では、1枚目の皮——「意味を作るコンタクトレンズ」とは何か。私たちは、出来事をそのまま見ているつもりで、実はレンズ越しに「意味」をつけて見ているのです。
面白い実験があります。次の文章を読んでみてください。
> 「新聞は雑誌よりマシだ。海岸は通りよりも良い場所だ。最初は歩くより走る方がいい。数回試す必要があるかもしれない。ある程度のスキルが必要だが、習得は簡単だ。小さな子供でも遊べる。鳥が近づきすぎることは滅多にない。雨は非常に早く染み込む。同じことをしている人が多すぎると問題が発生する」
——これ、何の話か分かりますか? たいていの人は「さっぱり分からない」と言います。
では、ヒントを一つ。「凧(たこ)」の話です。
そう言われてもう一度読むと、急に意味が通ります。凧なら、新聞より雑誌(厚い紙)で作るほうが丈夫そう。海岸は通りより広くて揚げやすい。走ったほうが揚がる。鳥が近づくと困る。雨が染みると破れる。同じ場所で大勢が揚げると糸が絡む——全部つながる。
同じ文章なのに、「凧」という言葉(レンズ)が入った瞬間、意味が見えた。 これが「意味を作るコンタクトレンズ」です。私たちは、世界をそのまま見ているのではなく、自分のレンズを通して意味づけしながら見ているのです。
イライラしているのは「あなた」ではない
ここからが核心です。日常で、あなたがイライラしたり、誰かを避けたいと思ったりする瞬間がありますよね。実はそれは——あなたではなく、コンタクトレンズ(脳)が作っている意味なのです。
たとえば、仕事の遅い部下にイライラするとき。その裏には「彼はもっと仕事をすべきだ」というレンズがある。遅い車にイライラするときも、「遅い=邪魔」というレンズが作動している。イライラしているのは「あなた」ではなく、「脳」が反応しているだけなのです。
これに気づくと、どうなるか。同じ状況でまたイライラしても、「ああ、これはコンタクトレンズが作った意味だ。私ではなく脳の機能だ」と認識できる。すると、感情にそのまま飲み込まれず、対応できるようになる。自分がそう思っているのではなく、そう思わされている——この視点が、脳の支配から自分を解き放ちます。
なぜリーダーにこれが必要なのか
リーダーは、ありのままの現実を見なければなりません。でも、自分にレンズがかかっていると、現実が歪んで見える。しかも厄介なのは、組織の全員が、それぞれ違うレンズをかけていることです。
あなたが「遅い車=邪魔」と見ているとき、隣の人は「心配なおばあちゃん」と見ているかもしれない。みんな違う意味づけをしている。その違うレンズ同士が相互に影響し合って、組織のコミュニケーションは複雑になる。だからリーダーは、まず自分のレンズを外し、次に周りの人のレンズを理解していく。これが組織のコミュニケーションの基盤になります。
実践:オニオンの顔(レンズ)を見つける
最後に、今日からできる実践を。自分のコンタクトレンズを、できるだけたくさん見つけることです。1枚2枚ではなく、何十枚もあります。
やり方はこうです。イライラしたとき、誰かを避けたいと思ったとき、その瞬間に「どんな意味がついていたか」を探って、ノートに書く。「仕事が遅い部下=もっとやるべきだ」「返信が遅い=軽視されている」——こうしたレンズを言葉にして書き出す。たくさん見つけるほど、「これは自分の脳の機能なんだ」と認識でき、だんだん解放されていきます。気づくことが、すべての始まりです。
1枚目の皮を剥いたら、次は2枚目。「完全に聞く」技術の記事へ進みましょう。全体像はオニオンリーダーシップの地図で確認できます。
まとめ
リーダーが最初に剥く皮を整理します。
– リーダーシップは知識でなく実践で身につく。第一歩は本来の自分になること- 人は誰でも見えない「皮」をかぶっている。剥くのは自分にしかできない- 1枚目の皮=意味を作るコンタクトレンズ。私たちは世界に勝手に意味をつけて見ている(凧の文章が示すように)- イライラの正体は「あなた」ではなく「脳」。レンズが作る意味だと気づけば、感情に飲まれず対応できる- 組織の全員が違うレンズをかけている。まず自分の、次に周りのレンズを理解するのがリーダーの仕事- 実践:イライラした瞬間の「意味」をノートに書き出し、自分のレンズをたくさん見つける
イライラや苛立ちを「自分の性格」だと思うと、変えられない気がします。でも、それは脳が作った意味にすぎない。そう気づくだけで、世界の見え方が少し変わります。まずは今日、自分がどんなレンズをかけているか、探してみてください。
これはオニオンリーダーシップの皮の1枚目です。次は2枚目——相手の話が本当には聞こえない「ヘッドホン」、つまり「完全に聞く」を見ていきます。
この記事は、僕が主宰するオンライン講座「スタバード」のリーダーシップ講義と、著書『オニオンリーダーシップ』をもとに書いています。MBAやハーバードで学んだ経営の核を、日本語でやさしく届けるために、「MBAに行かない人のための無料メール講座」をやっています。興味があれば、のぞいてみてください。
