ファイナンス

財務三表は、こわくない ── PL・BS・キャッシュフローを一気に読む

結論から言います。会計は、実はとてもシンプルです。 難しい専門用語がたくさんあるので苦手意識を持つ人が多いのですが、用語を丸暗記する必要はありません。経営の良し悪しを判断するために、財務三表(PL・BS・キャッシュフロー計算書)の「読み方」と「流れ」さえ掴めば十分。今回は、リンゴ屋さんと家の購入という身近な例で、財務三表を一気に読めるようにします。

なぜ会計を学ぶのか

会計は、MBAでもいちばん最初に学びます。なぜなら、そのあとに出てくる戦略・オペレーション・マーケティングなど、すべてにつながる土台だからです。会計が分からないと、その先が分からない。

そして、会計のゴールは「分析すること」ではありません。会社のキャッシュを絶やさないこと、そして良い経営判断をして企業価値を最大化すること。経営者の視点に立つための道具、それが会計です。財務三表とは、その名のとおり3つの表のこと。ポケモンの最初の3体(ヒトカゲ・ゼニガメ・フシギダネ)になぞらえると——PL(損益計算書)・BS(貸借対照表)・キャッシュフロー計算書の3つです。一つずつ見ていきましょう。

PL(損益計算書):売上から利益までの「旅」

PL(Profit and Loss)は、売上(レベニュー)から、当期純利益(ネットインカム)までを巡る旅です。上から順に見ていきます。リンゴ屋さんで考えましょう。

– 売上(Revenue) ── リンゴを100万円分売った- 原価(COGS) ── そのリンゴは農家から40万円で仕入れた- 粗利(Gross Margin) ── 100万 − 40万 = 60万円- 販管費(販売管理費) ── 人件費などの経費が20万円- 営業利益(OP) ── 60万 − 20万 = 40万円- 営業外費用 ── 銀行の利子など10万円を引く → 経常利益- 税金など ── 特別損益や税金を引いて、最後に残るのが当期純利益(ネットインカム)

上から下へ、売上が削られて、最後に利益が残る。この流れがPLです。覚えてほしい英語は、レベニュー(売上)・COGS(原価)・グロスマージン(粗利)・ネットインカム(純利益)くらい。トヨタのような大企業でも構造は同じで、売上30兆円から原価23兆円を引いて粗利7兆円…と、最後に利益が残る。数字が大きくなっても、構造はリンゴ屋さんと同じです。

BS(貸借対照表):「家を買う」と思えば分かる

ここから少し難しく感じる人が増えますが、BS(Balance Sheet)は「家を買う」と思えば一発です。

3,000万円の家を買うとします。銀行から1,500万円借りて、頭金(自己資金)を1,500万円用意した。これをBSにすると——

– 資産(Asset) ── 家そのもの。3,000万円- 負債(Liability) ── 銀行から借りた1,500万円- 資本(Equity) ── 自分で用意した頭金1,500万円

つまり「3,000万円の資産を、負債1,500万円と資本1,500万円で賄った」。ここがポイントです。左側の資産と、右側の(負債+資本)は、常に釣り合う(バランスする)。だからバランスシートと呼ばれます。どんな取引をしても、必ず1円単位で釣り合う。釣り合わなければ、どこかが間違っているのです。

中身はもう少し細かく分かれます。資産は、現金・売掛金・在庫などの「流動資産」と、車・建物などの「固定資産」。負債は、1年未満の「流動負債」(短期借入・買掛金)と、1年以上の「固定負債」(長期借入)。資本は、資本金や利益剰余金。トヨタなら、資産51.9兆円 = 負債31.3兆円 + 資本20.6兆円、と1円単位で釣り合います。

キャッシュフロー計算書:お金の流れを3つで見る

3つ目、キャッシュフロー計算書は、お金の流れを見る表です。3つの活動に分かれます。

– 営業活動によるキャッシュフロー ── 本業でどれだけ現金を稼いだか- 投資活動によるキャッシュフロー ── 設備や有価証券にどれだけ投資・回収したか- 財務活動によるキャッシュフロー ── 借入・返済・株式調達・配当など、資金をどう調達・返済したか

この表を見れば、会社がどうやってお金を獲得し、どう使ったかが一度に読み取れる。基本的にはPLとBSから作れますが、お金の流れをパッと把握するのに便利な資料です。

3つはつながっている ── 利益剰余金がカギ

ここが、財務三表マスターの肝です。3つの表はバラバラではなく、相互につながっています

たとえば、リンゴを100円で売って原価80円、利益20円が出たとします。このPL上の利益20円は、どこへ行くか。BSの「利益剰余金」に乗るのです。PLで生まれた利益が、BSの資本の中に積み上がっていく。さらに、まだ代金を受け取っていなければBSに売掛金100円が乗り(その間も左右は釣り合う)、入金されれば現金に変わる。

このように、PLの利益がBSにつながり、お金の動きがキャッシュフローに表れる。3つの表が連動している——ここまで掴めれば、財務三表はマスターです。

数字のつながりが分かったら、次は読み解きです。財務レシオで会社の健康状態を見る記事と、フリーキャッシュフローの記事へ進んでみてください。

まとめ

財務三表の読み方を整理します。

– 会計はシンプル。用語の丸暗記は不要。ゴールはキャッシュを絶やさず、企業価値を最大化すること- PL(損益計算書) ── 売上から純利益までの旅(リンゴ屋さんも、トヨタも構造は同じ)- BS(貸借対照表) ── 「家を買う」と思えば分かる。資産 = 負債 + 資本で常にバランスする– キャッシュフロー計算書 ── 営業・投資・財務の3活動で、お金の流れを一度に見る- 3つは連動している。PLの利益はBSの利益剰余金へ乗り、お金の動きがキャッシュフローに表れる

財務三表は、別々の難しい書類ではなく、一つの会社を3つの角度から見たものです。利益(PL)、財産の構造(BS)、お金の流れ(キャッシュフロー)。この3つがつながって見えれば、決算書はぐっと読みやすくなります。

そして、財務三表が読めるようになったら、次は「この会社は儲かっているのか、安全か」を素早く判断する道具——財務レシオ(ROAやROEなど)へ進めます。読む力がついたら、分析する力をつけていきましょう。


この記事は、僕が主宰するオンライン講座「スタバード」の会計学講義の内容をもとに書いています。MBAやハーバードで学んだ経営の核を、日本語でやさしく届けるために、「MBAに行かない人のための無料メール講座」をやっています。興味があれば、のぞいてみてください。

Free Email Course
この続きを、無料メール講座で。
ハーバードAMPに学んだ設計者が、MBAのエッセンスを無料でお届けします。

登録は数十秒。いつでも配信解除できます。