実務・現代ビジネス

DXの正体は「4つのキーワード」 ── ネットワークエフェクトからIoTまで

結論から言います。DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、単なるIT化ではなく、デジタルで「新しいビジネスモデル」を生み出すことです。 製造業がずっと「不良率を下げる」「利益率を上げる」と既存モデルの改善をしてきたのに対し、DXは、そもそものビジネスモデルを別物に変えてしまう。今回は、DXを理解するための4つのキーワード——ビッグデータ、ネットワークエフェクト、ラストワンマイル、IoT——を一気に学びます。これからビジネスを作る人に必須の視点です。

キーワード1:ビッグデータ ── 価値はAIよりデータにある

1つ目は「ビッグデータ」。よく「AI、AI」と言われますが、AIそのものが偉いわけではありません。AIで分析できる大量のデータ(ビッグデータ)が取れるようになったから、AIが注目されているのです。だから本質は、データが価値を持つということ。データを使えば、購買のタイミングやサービスを最適化できる。データを制する者がビジネスを制する——GAFAやウォルマートが、こぞってデータを取りに行っているのは、このためです。

キーワード2:ネットワークエフェクト ── 増えるほど価値が増す

2つ目は「ネットワークエフェクト」。これは絶対に覚えてほしいキーワードです(ハーバードでも、これに関するケースが10個ほどありました)。

従来の企業は、ユーザー数が増えるほど、競合や代替品が出てきて、価値はなだらかに薄れていくモデルでした(トヨタがあれば日産もホンダもある、というように独占は難しい)。ところがFacebookのようなSNSは逆で、ユーザーが増えれば増えるほど、価値が指数関数的に増していく。Facebookの価値の源泉は、多機能さよりも、28億人という利用者数そのものにあります。

なぜそうなるか。理由はシンプルで、家族や友達が使っているから、自分も使うから。「あいつが使っているなら自分も」と連鎖して、人がどんどん増え、価値が増大する。FacebookがInstagramやWhatsAppを買収できたのも、すでにこのネットワークエフェクトが働いていたからだと言われます。

増えるほど価値が増すネットワーク効果は、プラットフォームの記事で詳しく扱っています。

キーワード3:ラストワンマイル ── ウォルマート対アマゾン

3つ目は「ラストワンマイル」。直訳すると最後の1マイル(約1.6km)。最終拠点から、エンドユーザーの玄関までの物流を指します。なぜ「ラスト」かというと、そこがまだサービスとして完全には成立していない、最後の難所だからです。

なぜ重要か。物流を制する者が、ビジネスを制するから。私たちは結局、何かを買って、運んで、消費している。だから、ラストワンマイルを制する者が「量」を制するのです。

今、その覇権をかけた戦いの構図が——ウォルマート対アマゾンです。これも絶対に覚えてください。ウォルマートはリアルの王者(世界一の小売)、アマゾンはバーチャルの王者。両者が、世界を制覇しようとして、最後のラストワンマイルでぶつかっています。

– アマゾン ── ドローン配送「アマゾン・プライムエア」で、バーチャルの注文をリアルで届けにいく- ウォルマート ── EC企業JETを買収(JET創業者マーク・ロリーは、おむつ販売サイトをアマゾンに売却した後、JETを設立した人物)。全米に店舗があるので「物流では負けない」と、JET+店舗網でアマゾンに対抗

リアルの王者がバーチャルへ、バーチャルの王者がリアルへ。どちらがラストワンマイルを取るのか——ニュースを見るときの視点になります。

ラストワンマイルの物流競争は、オペレーションの記事の延長線上にあります。

キーワード4:IoT ── 新しいビジネスモデルが生まれる

4つ目は「IoT(Internet of Things、モノのインターネット)」。コンピューターだけでなく、冷蔵庫や機械など、身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながり、通信する仕組みです。

なぜ重要か。リアルタイムのモニタリングやビッグデータの収集もできますが、いちばんの理由は——IoTによって、まったく新しいビジネスモデルが生まれるからです。2つの代表例を見ましょう。

GE(飛行機エンジン) ── ジェフ・イメルトCEOが進めたIoT変革。飛行機のエンジンを「売る」のではなく、飛んだ分だけ払うサブスクリプションに変えた。エンジンは無料で使ってもらい、飛行中もネットでモニタリングして、使った分だけ課金する。「人はドリルが欲しいのではなく、ドリルが開ける穴が欲しい」——顧客が欲しいのはエンジンではなく、飛んでいる飛行機のサービス。だからサービスを売る形にした。GEメディカルのCTスキャナー(1台5000万円)も「1スキャンいくら」のモデルに変えました。

小松(KOMATSU、建機) ── ショベルカーやダンプをインターネットにつなぎ、世界中の稼働状況を監視。これで何ができるか。世界中の建機の動きが鈍くなれば「不況が来る」と分かるので、需要を予測して生産調整できる。実際、小松はこれでリーマンショックを無傷で乗り越えました(オペレーションで学んだ「需要と供給を合わせる」の実践です)。さらに中国などで支払いが滞れば、ネット経由でエンジンを止めて回収率100%にすることもできる。

このように、IoTは既存のビジネスを、パフォーマンス課金・効率重視・リスクシェア・未来予測・サブスクリプションといった新しいモデルへと変えていきます。

DXと対になる現代のもう一つの潮流が、SX(サステナビリティ)の記事です。

まとめ

DXの4つのキーワードを整理します。

– DXは単なるIT化でなく、デジタルで新しいビジネスモデルを生むこと- (1)ビッグデータ ── 価値はAIよりデータにある。データを制する者がビジネスを制する- (2)ネットワークエフェクト ── 利用者が増えるほど価値が指数関数的に増す(Facebook=家族友達が使うから自分も使う)- (3)ラストワンマイル ── 物流を制する者がビジネスを制する。ウォルマート(リアル)対アマゾン(バーチャル)の覇権争い- (4)IoT ── モノがネットにつながり、新しいビジネスモデルが生まれる(GEはエンジンをサブスク化、小松は需要予測でリーマン無傷)

ビジネススクールは「10年後」を教える場所です。今日の4つのキーワードは、これからビジネスを作る人にとって必須の道具。昔と同じことをしていては、新しいビジネスモデルは生まれません。ぜひ「自社でビッグデータ/ネットワークエフェクト/ラストワンマイル/IoTを使えないか」と考えてみてください。

そして、これらの潮流は、次に学ぶ「持続可能性(SX)」とも深くつながっています。テクノロジーが変えるのはビジネスモデルだけでなく、企業の存在意義そのものへと広がっていきます。


この記事は、僕が主宰するオンライン講座「スタバード」のDX講義の内容をもとに書いています。MBAやハーバードで学んだ経営の核を、日本語でやさしく届けるために、「MBAに行かない人のための無料メール講座」をやっています。興味があれば、のぞいてみてください。

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