リーダーシップ

組織が「勝手に動き出す」仕組み ── リーダーシップの最終ゴール、自走する組織

結論から言います。リーダーシップの最終ゴールは、あなたがいなくても組織が動く「自走する組織」を作ることです。 いちいち指示しなくても、全員が同じ方向に向かって自分から動く。リーダーが手取り足取り引っ張る組織は、リーダーが倒れたら止まってしまう。本当に強いのは、自分で進む組織です。今回は、リーダーシップ講義の最終回——自走する組織の作り方を学びます。

(これまで、本来の自分になり[皮を3枚剥く]、リーダーシップの7つの要素を実践してきました。その先にあるゴールが、これです。)

船出のたとえ ── 全員が同じ方向に漕ぐ

組織を、船にたとえてみましょう。あなたの組織が、いよいよ船出を迎えた。荒波で遭難するか、宝島にたどり着くか。もちろん、誰もが宝島を目指します。

宝島にたどり着くには、全員が同じタイミングで、同じ方向にボートを漕ぐ仕組みが必要です。10人で漕ぐボートで、みんなバラバラのタイミングで漕げば、船はジグザグに進む。一人でも漕がない人がいれば、速度は落ちる。全員が「せーの」で力を合わせて漕ぐ——この状態を作ることが、「自走させる」ということです。

自走する組織の3つの条件

では、どうすれば全員が同じ方向に漕ぐのか。条件は3つあります。

条件1:全員が積極的に関わっている

心理学の専門誌の調査では、従業員が事業に積極的に関わっている企業は、そうでない企業より生産性が46%高いという結果が出ています。やらされている組織と、自分から関わる組織では、これだけ差が出る。まず、全員が積極的に関与しているかどうかが、自走の土台です。

条件2:目的(Why)→指示→行動の順になっている

生産性の高い組織の指揮系統には、特徴があります。「これをやって」「あれをやって」という指示から始まるのではなく、「なぜそれをやるのか(Why=目的)」が分かったうえで、指示が出て、行動が生まれる。

なぜやるのか分からないまま動かされると、人は力を出せません。目的を理解してから動くと、生産性が上がる。リーダーは、指示の前に「なぜ」を共有する。これが2つ目の条件です。

条件3:自分ごとである

3つ目は、組織の目標を「自分ごと」として捉えていること。他人ごとだと、人は本気になれません。組織の問題を、自分の問題として引き受けられるか。前に学んだ「範囲(自分ごとの広さ)」が、ここで効いてきます。

多様なメンバーをまとめる難しさは、クロスカルチャーの記事とも深くつながります。

さらに必要なのは「パイ」

この3条件に加えて、もう一つ欠かせないものがあります。「パイ」です。これは、長期目標から落とし込んだ各部署の目標・タスクが、次の状態になっていること。

– 長期目標と短期タスクの方向が一致している ── 各部署が勝手に目標を立てるのではなく、組織の長期目標と同じ方向を向いている- 数値目標が明確である ── 「100%勝つ」「1日100件」のように、数字ではっきりしている- 全員がコミットしている ── それぞれが「自分もやる」とエンゲージメントしている

長期のゴールと、日々のタスクが、同じ方向に揃い、数値で明確で、全員がコミットしている。これがそろって初めて、組織は自走して働きます。

たとえ話で理解する(あえて悪役で)

方向が揃う、とはどういうことか。あえて物語の悪役組織で考えてみましょう。

ある悪の組織に、「世界を支配する」という長期目標があるとします。その下で、ある部署は「魔法界を支配する」という短期目標を立て、「政府の権限を奪う」「資金を集める」というタスクを実行する。別の部署は「戦いに勝つ」という短期目標で、「敵を倒す」「敵のリーダーを連行する」というタスクを実行する。

ポイントは、各部署の短期目標が、勝手なものではなく、長期目標と同じ方向を向いていること。そして数値目標が明確で、全員がコミットしている(パイがある)。悪役の例で言うのも何ですが、組織が自走する構造としては、まさにこれです。長期目標と現場のタスクが一直線につながっている。

リーダーシップ全8回の総まとめ

これで、リーダーシップの全要素がそろいました。A〜Hの8要素を、最後に一望します(ドレミの歌のように繰り返すと覚えられます)。

– A:範囲(Area) ── 自分ごとの広さ- B:立つ位置(Base) ── 覚悟- C:コミュニケーション ── 完全に聞く+最上級の承認- D:宣言(Declaration) ── 未来を宣言し招待する- E:存在(Existence) ── リーダーとしての存在- F:未来(Future) ── 組織の未来を作る- G:偽物の自分を手放す(Give up) ── 本物の自分でいる- H:調和(Harmony) ── 組織の調和

そして全体の流れはこうです。本来の自分になる(玉ねぎの皮=コンタクトレンズ・ヘッドホン・チャットボットを剥く)→7つの要素を実践する(数値で測り、弱点を知る)→自走する組織を作る(全員が同じ方向に漕ぐ)。この順で、リーダーとリーダーシップが出来上がっていきます。

リーダーシップ全体の地図はオニオンリーダーシップの全体像に戻って見渡せます。

まとめ

自走する組織を整理します。

– リーダーシップの最終ゴールは、自走する組織(全員が同じ方向に漕ぐ)を作ること- 3つの条件:全員が積極的に関わる(関与度の高い企業は生産性46%高)、目的→指示→行動の順、自分ごと– さらにパイが必要:長期目標と短期タスクの方向一致・数値目標が明確・全員がコミット- 全体の流れ:本来の自分になる→7つの要素を実践→自走する組織を作る

リーダーが一人で引っ張る組織には、限界があります。全員が目的を理解し、自分ごととして、同じ方向に漕ぐ——そんな自走する組織を作れたとき、リーダーシップは完成に近づきます。あなたの組織には、共有された目的と、それに向かうパイがあるでしょうか。

最後に。僕が思うに、リーダーシップとは、本来の自分を探していく探求の物語です。完璧なリーダー像を真似るのではなく、皮を剥いて本来の自分を見つけ、要素を一つずつスキルにして、自分独自の物語を紡いでいく。これでリーダーシップの旅の準備は整いました。あとは、明日から実際にコートに立つだけです。あなたのリーダーシップの旅が、よい旅になりますように。Enjoy your leadership journey.


この記事は、僕が主宰するオンライン講座「スタバード」のリーダーシップ講義(全8回)と、著書『オニオンリーダーシップ』をもとに書いています。MBAやハーバードで学んだ経営の核を、日本語でやさしく届けるために、「MBAに行かない人のための無料メール講座」をやっています。興味があれば、のぞいてみてください。

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