結論から言います。リーダーシップは、感覚ではなく、数値で測れます。 「自分はリーダーとしてどうなのか」を点数化すると、強みと弱みがはっきり見える。コミュニケーションは高いが宣言ができていない、自分ごとの範囲が狭い——そうした弱点が分かれば、どこを伸ばせばいいかが明確になります。今回は、本来の自分(玉ねぎの皮を3枚剥いた状態)を土台に、リーダーシップを実践する「7つ(8つ)の要素」を学びます。
(前回までで、コンタクトレンズ・ヘッドホン・チャットボットという3枚の皮を剥き、本来の自分になりました。ここからは、その自分を使ってリーダーシップを発揮する段階です。)
オニオンリーダーシップの要素:A〜H
オニオンリーダーシップには、A〜Hの要素があります(ドレミの歌のように繰り返すと覚えられます)。大きく「リーダーとしての存在」と「リーダーシップの発揮」に分かれます。
– A:範囲(Area) ── 自分の存在範囲。どこまでを自分ごととして考えるか- B:立つ位置(Base) ── 自らの選択でその場所に立っているか(覚悟)- C:コミュニケーション ── 完全に聞き、最上級の承認をする- D:宣言(Declaration) ── 未来を宣言し、皆を招待する- E:存在(Existence) ── リーダーとしての存在の大きさ(人からの見え方)- F:未来(Future) ── 組織の新しい未来を作る- G:偽物の自分を手放す(Give up) ── 本物の自分でいる- H:調和(Harmony) ── 組織の調和
一つずつ、要点を見ていきます。
A:範囲 ── どこまでを「自分ごと」にするか
自分の存在範囲を、どこまで広げられるか。頭が痛ければ「自分の頭」だから何とかしようとしますね。同じように、組織を、さらにはお客様や社会までを「自分の範囲」と捉えられると、自分ごととして動ける。自己中心的に範囲を広げるほど、結果的に組織全体のことを考えることになる、という逆説です。範囲が狭いと気づいたら、明日から「会社全体を自分だと思って」見てみる。すると、放っておけないことがたくさん見えてきます。
B:立つ位置 ── 自ら選んでそこに立っているか
リーダーは、自ら選択してその場所に立つ必要があります。流されてそこにいるのか、自分の意思で立っているのか。たとえ気が進まないことでも、「自らの選択でやる」と決めると、そこに強さ(パワー)が生まれます。覚悟、と言い換えてもいい。
C:コミュニケーション ── 組織はコミュニケーションでできている
組織はコミュニケーションでできています。 コミュニケーションがゼロなら、リーダーシップもゼロ。そして、コミュニケーションは言葉だけではありません。イライラして見える、幸せそうに見える、人前で涙を流す——行動や態度も、言葉より大きな声で思いを伝えるコミュニケーションです(松下幸之助が壇上で涙を流し、そこから復活が始まった逸話のように)。
ここには2つの要素があります。ひとつは、以前学んだ「完全に聞く」(相手に「完全に聞いてもらった」経験を残す)。もうひとつが「最上級の承認」です。承認とは、契約書のハンコや経費の承認のことではありません。相手の存在そのものを認める、最上級の承認のこと。これが組織のコミュニケーションを支えます。
G:偽物の自分を手放す ── 本物の自分でいる
偽物の自分(かぶった皮、演じている自分)を手放し、本物の自分でいること。本来の自分になる3部作で剥いてきた皮を、実践の場でも手放し続ける、ということです。
H:調和 ── 組織の調和
組織全体の調和を保つこと。個々がバラバラに動くのではなく、まとまりを生み出す力です。
特に大事な要素1:約束 ── 些細な約束こそ守る
ここから、特に重要な2つを深掘りします。まず「約束」です。
リーダーは、どんな些細なことでも、自分との約束を守らなければなりません。たとえば「毎日英語を勉強してTOEICで満点を取る」と周りに宣言して、3日坊主でやめたら、言葉への信頼は地に落ちます。逆に、毎日続けている姿を見せれば「有言実行だ」と信頼される。
僕自身、「毎朝ヨーグルトしか食べない」と言ったら、本当に年間110箱のヨーグルトを食べます。「ニックさんなら本当にやりかねない」——些細なことでも、やると言ったらやり遂げる。それを繰り返すことで、どんな厳しい状況でも「この人はやると言ったらやる」と周りが信じてくれる。それが約束とリーダーシップの関係です。
なお、約束には「他人があなたに抱く期待」も含まれます。期待を裏切ると、「マネージャーなのにやってくれない」と見るのは周りの人。自分ではコントロールできないからこそ、期待にも応えていく必要があります。
特に大事な要素2:宣言 ── 未来を宣言し、招待する
もう一つが「宣言(Declaration)」です。宣言とは、主張でも約束でもなく、未来を現実に持ってくる発言。「私はこれからこの未来を生きていく」という選択の宣言です。マーティン・ルーサー・キングの “I have a dream” がまさにそれ。自分より大きなもののために、そこに立つ。
そして宣言には、もう一つ大切な要素があります。「招待」です。「この未来に、皆さんを招待します」と呼びかけ、参加する人が「私もやります」とコミットメントを表明する場を作る。元IBMのCEOルイス・ガースナーも「経営陣にできるのは、文化を変わるよう招待することだけ。最も難しいのは、その招待を受け入れてもらうことだ」と語っています。宣言して、皆に受け入れてもらう——このプロセスが要ります。
リーダーシップを「数値化」する
これらの要素を点数化したものが、オニオンリーダーシップ指数です。大きく2つあります。
リーダー指数 ── 存在(E)×(範囲(A)+立つ位置(B))。あなたの「リーダーとしての存在」を測る。存在の大きさは人からの見え方、範囲は視野、立つ位置は覚悟、と捉えると分かりやすい。
リーダーシップ指数 ── コミュニケーション(C)、偽物の自分を手放す(G)、調和(H)、未来(F)、宣言(D)などを組み合わせて、「リーダーシップの発揮度」を測る。
計算してみると、たいてい100点には遠く届きません。でも、それでいい。大事なのは点数の高低ではなく、どこが弱いかに気づくことです。「未来と宣言が低い=組織で目標を共有できていない」「コミュニケーションは高いが宣言がない=完結していない」——弱点が見えれば、そこが伸びしろです。
定期的に測って、振り返る
この指数は、半年に1回など定期的に測ることをおすすめします。前回の点数を残しておき、半年後の自分と見比べる。すると、成長したところ、成長したつもりで変わっていないところが見えてくる。自分のリーダーとしてのあり方を、定点観測できるのです。
数値で現在地を把握したら、最終ゴールの自走する組織の記事へ。全体像はオニオンリーダーシップの地図で。
まとめ
リーダーシップ7(8)つの要素を整理します。
– リーダーシップは感覚でなく数値で測れる(リーダー指数・リーダーシップ指数)- 要素はA〜H:範囲・立つ位置・コミュニケーション・宣言・存在・未来・偽物の自分を手放す・調和– 範囲は「自分ごとの広さ」、立つ位置は「覚悟」。広げ、自ら選ぶ- コミュニケーションは組織の土台。完全に聞き、最上級の承認をする(行動も態度もコミュニケーション)- 特に大事なのは約束(些細な約束こそ守る=ヨーグルト110箱)と宣言(未来を宣言し、招待してコミットしてもらう)- 点数の高低より、弱点に気づくことが目的。半年に1回測って振り返る
リーダーシップは、漠然と「足りない気がする」で終わらせず、要素に分解して測れば、伸ばす場所が見えます。まずは自分の「範囲」「約束」「宣言」あたりから、今どうなっているかを振り返ってみてください。
そして、これらの要素がそろったとき、リーダーシップの最終目標が見えてきます。次回は、組織が自分で動き出す——「自走する組織」の作り方を見ていきます。
この記事は、僕が主宰するオンライン講座「スタバード」のリーダーシップ講義と、著書『オニオンリーダーシップ』をもとに書いています。MBAやハーバードで学んだ経営の核を、日本語でやさしく届けるために、「MBAに行かない人のための無料メール講座」をやっています。興味があれば、のぞいてみてください。
